李英老師の師、譚吉堂師爺は「快譚手」と呼ばれ対外試合において24戦無敗、ほとんどの相手を六大開の提肘から双纏手で吹っ飛ばしたことで知られています。また発勁の爆発力も飛び抜けていて、誰も真似できなかったとされています。背丈は低いにも関わらず大柄な体格の人間が多い中国東北地方、吉林省一帯から長春市の中で名人として名を馳せた訳ですが、少しその譚師爺の八極拳について考えて見ました。(私が勝ってに考えているだけです、独りよがりの脳内八極拳です。ご容赦下さい)
長春八極拳は器具を使った練功法が有名です。鉄砂掌はその中でも取り分け重要で、多くの人が練習します。それ以外も刁球とか棚弓とかいろいろあるのですが、譚師爺はその中でも「掌板」を集中的に練習したとされています。掌板は地中に埋め込んだ分厚く、長い重い板を打ち上げるように行います。コンクリートで土木工事をして、板はガイドに沿って打ち上げるようになってました。腕の力だけでは到底不可能で、所謂ところの三盤合一、六合が不可欠です。譚師爺の爆発力の秘密の一つは間違いなくこの掌板であると言われています。しかしながらこの掌板はかなり大掛かりな代物で現代では、ましてや日本では実現は難しいと思います。掌板の話しとは別に私の長春での修行時代、譚師爺が良く教えて下さった秘訣に「借人式 打人力」があります。
「お前は私と同じで背丈もあんまり高くないから良く研究しなさい」と言うことでした。相手の式=やり方を借りる、要は相手の力や体勢、技だけでなく、自分は歩や身法を使い相手の反応を利用、或は反応させて倒すという理解で良いと思います。譚師爺は「この式を借りる」ということにプラスして先の先で相手の機先を制する速さ(呼吸、近づく速さ)、そこからの変化、爆発力などが備わっていたと勝ってに推測してます。今でも思い出して、研究しているのは譚師爺の「手 」です。単掛掌(推手)を教えて頂いた時のあの感じ、なんとも表現できない…、推せそうで推すと自分が不安定になるというものでした。差して相手と手を交差させてから崩す(一扎把)動作を受けると接触した瞬間、何故か大きな球のようなものに触れてる感じから引き崩される。今は「借人式 打人力」の本質はこの相手を無力化させることなのでは?と思ってます。