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鉄砂掌の本当

八極拳と言えば強烈な発勁=打撃力の強さと思う方がほとんどでしょう。実際のところ譚吉堂師爺から李英老師の系統でもいわゆる「手の重さ」とか「手足に功夫をつけろ」とか言われてきました。ここで中国武術を練習される方の間で度々話題に上がる「鉄砂掌」の練功について私の理解してる範囲で少しだけ説明します(最近、何故か良く聞かれるので…)。長春八極拳で練習する鉄砂掌の目的は先に書いた通りで「手足に功夫をつけろ」ということになります。台の上に鉄砂袋(50×70×14くらいの大きなものでないと効果は無い)を乗せて肘から先部分、手の甲、手のひらの表裏全体を打ちつける練習と李英老師の改良されたパンチングボールに鉄砂を詰めたものを吊り下げて、それを打ったり蹴ったりする練習の2種類存在します(正確には鉄砂と緑豆を配合します)。練習した人は分かりますが、自分が最初に思ったより打ったり蹴ったりできるものです。しかしながらダメージは毎日の蓄積で貯まってくるので、鉄砂掌を打つ規則を守ってないと、疲れがたまった時にいっぺんにつけがやって来ます。台の鉄砂袋を打ち付ける練習は特に負担が大きく、正直なところ私はあまり熱心には練習しませんでした。パンチングボールのタイプは良く練習して今も時々行っています。もう故人ですが、同じ李英老師の入室弟子でK会に所属していたY氏は鉄砂掌の練習をやり込んでました。当時30歳そこそこで暗勁を打ってましたからかなりのものです。李英老師も「見てみろ!Yの掌には毒がある」と褒めておられました。しかしながらこの鉄砂掌の練功は身体に負担がかかるのが欠点で、Y氏も鉄砂掌の鍛練が直接の原因とは言えないとは思いますが、癌で他界してしまいました。本人も少し自覚があったのか亡くなる前に「打樁(木を打つ練習)だけにしとけば良かった…」と呟いてました。そう言えば霍慶雲公は晩年は半身不随、長男であった霍文伯氏は晩年は失明、長春では若い時に鉄砂掌の鍛練をやり過ぎて、腰が異常に曲がってしまったり股関節が変形してしまった老人が結構いたりという話がありました。

とは言え効果は絶大で結果的に私も「手足の重さ」は何とか獲得出来てます。「なぜ手が重たくなるのか?」…個人的には「感覚の麻痺」が一番の理由と思ってます。痛感が若干薄れて来てるので本来の腕の重さ(体重の8%)をおもいっきり解放できる、ブレーキが掛からない。単純な脱力とは別の夢中になる異質の重さ。そこに到る秘密はその練習方法にあります。特別製の練功道具と勁道を獲得させる秘伝の打ち方、そして決め手として打撲による鬱血を解決するための鉄砂薬にあるのでしょう。ちなみに長春八極拳のそれは「雲南百薬」ではありません。成分もまるっきり違ってました。今、現在は誰ももってないし、作ることも不可能だと思います。

現在、ネットで入手出来る鉄砂の中には「砂鉄」も入ってますが(砂鉄では打った時に粒が小さ過ぎて袋の中で流動しないので練功には適していない)、鉄砂掌で練功する時の鉄砂は鋳物工場で研磨の時に使用されるスチールショット(小さな鉄球)ということになってます。ここまで書けば「鉄砂掌って身体にとっては絶対ダメなヤツ!」って分かると思います。まさか自己流で鉄砂掌を練習される方はいないと思いますが…。絶対に無理です!止めて下さいね。命が無くなる危険があります。武学練用舎では入会される方を募集してます。ホームページからお問い合わせフォーマットでご連絡下さい。https://www.bugakuren.com/

内含勁について

youtube動画で「内含勁」をUPしたので、捕捉の説明を入れます。
内含勁は簡単にいえば身体にスプリングが入ってるような感覚、勁道のことです。下丹田に気を沈ませてお腹の内側から溢れてくる圧力感を手足に繋げます。合気道で言われている呼吸力と同じ類いと思って頂いて構わないでしょう。この内含勁と言う文言は多分長春八極拳だけで、老師によっても違うと思われます。八極拳の基本である小架や金剛八式、易筋経の練習を通じて自然に培われます。つまりは沈墜勁(沈ませる)、十字勁(十字方向に展開)、纏糸勁(螺旋)の追究ですね。
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